糖尿病の検査を受けた時に、よく耳にする数値の一つに「ヘモグロビンエーワンシー(HbA1c)」があります。血液の主成分である赤血球に存在するヘモグロビンにブドウ糖が結合したもの、グリコヘモグロビンとも呼ばれるものの割合についての数値のことをいいます。ヘモグロビンエーワンシーはなぜ糖尿病の検査で注目されるのか、詳しくご紹介します。

ヘモグロビンエーワンシーとは

ヘモグロビンエーワンシーとは、ヘモグロビンにブドウ糖が結合したものの割合のことです。ヘモグロビンは血液を構成する成分の一つである赤血球に含まれているタンパク質の一種です。血管内を流れ、全身の細胞に酸素を運ぶ役割があります。このヘモグロビンにブドウ糖が結合し、細胞に運ばれています。血液中に存在するヘモグロビンのうち、ヘモグロビンに糖が結合した糖化ヘモグロビンがどのぐらい存在しているのかその割合の数値がヘモグロビンエーワンシーとなります。

なぜ血糖値だけでなくヘモグロビンエーワンシーも検査に必要なのか

血糖値は血液中の糖の濃度です。また尿に糖が含まれる場合、血液中の糖の濃度が高く排出されていることが分かるため、糖尿病の検査では血液検査と尿検査で血糖値を調べます。ただ、血糖値は食事の前後で数値が大きく変わるため、健康診断をする前に集中して食事を抜いたり運動をしたりといったことで血糖値を下げることが可能です。一方ヘモグロビンエーワンシーは、赤血球の寿命と関わりがあるため、その寿命の120日間は値が変動することはありません。そのため、ヘモグロビンエーワンシーは糖尿病の判断をする際に重要視されているのです。ヘモグロビンエーワンシーの数値は、血液中の全てのヘモグロビンの中に糖が結合した糖化ヘモグロビンがどれぐらい含まれているかを示しており、ヘモグロビンの寿命までその数値に変化がないことに加え、過去1~2ヶ月の血糖値の影響を反映します。そのため、世界中で糖尿病を判断する数値として使用されています。

ヘモグロビンエーワンシーが過去の血糖値を反映する理由

ヘモグロビンの寿命は120日間ですが、実際には血液は常に循環しているため、一度に全部のヘモグロビンが寿命を迎えて新しいヘモグロビンと入れ替わるということはありません。ヘモグロビンは骨髄で造られた後、血管内を循環した後、古いものは脾臓で破壊されます。そのため赤血球の中にあるヘモグロビンは古いものと新しいものが混在しています。また糖と結びついた糖化ヘモグロビンも細胞に吸収されて半減するため、大まかに考えて採血時の1~2ヶ月の糖化ヘモグロビンが存在していると考えられているのです。

ヘモグロビンエーワンシーだけでは糖尿病の判断はできない理由

飲食で増減してしまう血糖値だけでは糖尿病とは診断できません。そのためヘモグロビンエーワンシーの数値も必要とされています。ただ、ヘモグロビンエーワンシーの数値だけでも糖尿病とは判断できないのです。その理由として一番大きいのは貧血です。貧血は血液中の赤血球が減った状態なので、ヘモグロビンの量も少なくなります。そのため血液検査でヘモグロビンエーワンシーの数値が下がってしまうのです。また貧血の改善のために鉄分を補給した際にもヘモグロビンエーワンシーが下がってしまいます。これは鉄分を補給して赤血球の製造が速くなることで、赤血球の寿命が短くなることに関係しています。つまりヘモグロビンエーワンシーの数値だけを見ても、すぐに糖尿病とは判断できません。糖尿病の診断は、血液検査や尿検査に加え、ブドウ糖負荷試験など複数の検査の結果から判断することが必要なのです。