喫煙や飲酒は、すぐに命に関わるものではありません。そのため「タバコぐらい」といって禁煙をしない人は少なくありません。分煙や飲食店の禁煙化などが進み、タバコを吸う人は減少傾向にありますが、それでも「嗜好品」としてのタバコは根強い人気があります。ただ、タバコの習慣は糖尿病のリスクが高まることが近年明らかになっています。そこで糖尿病と喫煙の関係について、その危険度も含め詳しくご紹介します。

禁煙すると血糖コントロールできなくなるのは本当?

糖尿病の人の中には、禁煙すると血糖コントロールができなくなるからとタバコをやめないという人が少なくありません。また「息抜きでちょっとぐらい」と喫煙する人もいます。「禁煙すると太る」という事実から、「禁煙すると血糖コントロールができなくなる、だからタバコをやめない」と主張する人もいます。実際に禁煙した人の約8割の人は体重増加の傾向にあるとされており、禁煙=太るということは事実です。またタバコを吸わないことで味覚や嗅覚が正常になるため、食欲がわいて血糖値が上がることも太る原因となっていると考えられます。ただし禁煙して太った人の多くは2~3kg程度の体重増加であり、身体的にはそれほど急激な体重変化とはいえません。逆にタバコを吸うことで不健康だった体が、正常に戻りつつあるのが体重増加という形で目に見えているだけともいえます。もちろんそのまま放置していればさらなる体重増加の可能性もありますので、禁煙しながら体重をコントロールしていくことが糖尿病治療に必要といえます。

喫煙は糖尿病のリスクを高める

喫煙は糖尿病にかかっている人だけでなく、そうでない人にもリスクがあります。喫煙をすると交感神経が刺激されるため、血糖値が上昇してしまいます。さらにインスリンの分泌をうながす指令を阻むため、血糖値を下げるために必要となるインスリンの量が多く必要になり、インスリン治療の妨げになってしまうのです。そのため、喫煙している人は他の糖尿病予備軍の人たちの中でも、糖尿病になるリスクが1.4倍あるといわれています。さらにこのリスクは喫煙数に比例するため、1日に吸うタバコの量が多ければ、それだけ糖尿病にかかるリスクも高くなってしまうのです。

禁煙後5年は喫煙中より糖尿病のリスクは高くなる

禁煙して間もない人の糖尿病のリスクは、喫煙中の人と比べると2割以上高いというデータもあります。これは喫煙することでの体重増加やストレスなど様々な要因があると考えられています。実際禁煙してから10kg以上の体重増加がある人は、糖尿病にかかるリスクが禁煙で2~3kgの体重増加の人よりも高いというデータがあるためです。ただし、禁煙から5年を過ぎると糖尿病のリスクは徐々に下がり、禁煙して30年経過後は非喫煙者の人の糖尿病リスクとほぼ変わらないとされています。

喫煙は心臓や血管の病気のリスクも高める

喫煙は糖尿病でない人であっても、心臓や血管に関わる病気のリスクを高めます。そのため、喫煙していない人よりも様々な病気になる可能性が高く、そこに糖尿病が加わると、糖尿病の合併症のリスクも高めてしまう可能性があるのです。糖尿病は進行し合併症を引き起こすと、その進行を止めることは限りなく不可能になってしまいます。透析や手足の切断といった最悪の事態を招かないためにも、禁煙が必要なのです。

過去に喫煙していた人も定期的な検査を受ける必要がある

タバコはやめたとしても、影響は体に残るため様々な病気の原因になりかねません。そのため、禁煙をした後も食事の見直しや運動の習慣をやめないこと、定期的な検診を受けることが必要です。そうすることで糖尿病のリスクを減らすことにつながります。